ネオヒューマニズム

「ネオヒューマニズムに内在する精神がこの世界の無生物や生きとし生けるもの全てに注がれるとき、私はこれをネオヒューマニズムと指定した。このネオヒューマニズムがヒューマニズムをユニバーサリズムへと、この世の創造物の全てに向けられる愛へと昇華させるであろう」 P.R.サーカー

全ての存在は密接につながっていて相互に結びついている―――いにしえよりヨギたちの研ぎ澄まされた感性はこのように捉えてきました。そうしたヨギの世界観にも見合ったネオヒューマニズムは、深く傷ついたヒューマニズムの限りある視野を超えて、人間があるべき姿の全体的な再概念化を図ります。意識的に、自己を見つめ直して、本来の人間に立ち返るプロセス、方法論―――それが、ネオヒューマニズムです。

人間社会には、ナショナリズム、排他的宗教、人種差別、性差別、等々様々な偏狭な主義や思想が根付き、今や世界はいがみ合い、反発しあってばらばらに分断されています。そうした考えには根本から異を唱えるネオヒューマニズムにおいては、森羅万象のあらゆる経験を畏怖の念と共に抱擁し、聖なる慈愛に充ち溢れ我々を駆り立てて止まない統合された世界へとその展望は繰り広げられています。

ネオヒューマニズムは、多くの全体論的な、新時代の潮流などのコラムで見いだすように、これは単なる修辞学的な相互関係ではありません。それは霊的な力です。なぜなら、それは宇宙の中に属しているという感覚に目覚める唯一の方法として霊的な実践行法を認め、積極的に推進しているからです。我々一人ひとりが全体の一部であり、相互に結びついているというこの帰属意識は、巧言的な「我々は宇宙の一部である」という単純な主張によってもたらされるものではありません。愛や尊敬の念、責任感や使命感は、変革の力として魔法のように我々の中に突然目覚めることはありません。また、瞑想に没頭し規律ある方法で自身の内面の深さを探るために真の努力を払おうとしなければ、他の人たちを教え導く権威が日々の生活の中でいきなり増すようなこともありません。「神はいたるところに存在する」といった単純な決まり文句に安堵していては、この追い詰められた世界が救われるチャンスを見いだすことはできないのです。

元来、ネオヒューマニズムは我々に変化への全責任を投げかけるのではなはだ強力です。 より簡潔に言えば、我々は変化を促進するために自らが変わらなければならないのです。 人間として、我々は自分自身の可能性を探り、自分がいったい何ものであるのか、そしてなぜ自分がここにいるのかについての理解を深めていかなければなりません。 これはまさに主たる動機となるものです――それは我々が人生を通して我が道を描くように我々皆にとって「最重要指令」と呼ばれるものかもしれません。 現時点では、この最重要指令は限られた資源のために他人と競争するように教えられている日々多忙な人々の大半には行き届かないままとなっています。

この最重要指令を慈悲深く適用させるならば、すべてのものが変わることがわかります。我々はもはや他人と競争する必要はありません。実際、意識的な存在としての我々の成長は周囲との関係に繋がっています。他者との相互関係をより強く意識することで、我々は自己中心的なものの考え方から周りを第一に考える人間へと変わります。そして、他者への奉仕が愛を生み、また、愛が奉仕を生みます。さらには、我々がこの歩みを相互の結び付きの中心へと踏み入れることで絆の感覚がより広がっていき、結果、人間はもはや存在のドラマのエゴに翻弄された主役を演じる必要はなくなるのです。科学者たちがビッグバンと呼んでいる最初の爆発以来、宇宙には物質が形成され、我々が今日目にしている世界に展開するようになったまさに今、意識そのものが時代を超えた叙事詩の主人公になろうとしているのです。こうして、あまねき渡る宇宙の意識の中で全てが展開し動いています。ですから、そうした中で我々は決して孤独な存在ではなく、我々の関係は生きとし生けるものと無生物の全てが一体のものとして固く結ばれているのです。

ネオヒューマニズムは、この広大なドラマの驚異とその中での我々の役割がどうあるべきかを説いています。人生を通して個人的にも集合的にも我々の旅を妨げるものはいかなるものも無視することはできません。統合的なその流れに乗れば、人種、性別、カースト、宗教などにおける差別の他、種差別でさえも、いかなる差別も一切認められない世界を可能にします。あらゆる形の教義や偏見を変える道具として、ネオヒューマニズムは人間の持つ合理的精神を重視します。そして、この合理的なプロセスに霊性を高める実践とその礎である道徳性を組み入れることにより、狭い感情に囚われることのない偏見を全く抱かないほどに純粋な心と、全てを包み込むほどの広く確固たる強い精神を育んでゆくのです。それは一つの人類社会を築くための基盤となるものなのです。