プラウト – 進歩的活用理論とは ?
霊性と社会
プラウト、進歩的活用理論はP.R.サーカー師によって、1959年に提唱された実用的な社会経済理論です。世界中のすべての資源とそれらの持つ可能性は人類共有の財産です。プラウトはそれらを最大限に活用し、それを合理的に分配する社会や経済の仕組みを提示しています。プラウトでは倫理観に基づいたスピリチュアリティ(霊性)を根底に置いていますので、これまでの唯物的な社会哲学とは根本的に違うと言えるでしょう。この霊性とは俗に言う宗教とは無縁のものです。我々の意識に内在する存在の源である霊性が、人々の意識を拡大し、人類が一体となった普遍的な社会づくりをしていく原動力になると考えています。
本当の進歩
Progressive (進歩的) Utilization (活用) Theory (理論)の頭文字をとったPROUTは、新しい「進歩」の概念を持っています。通常、発明などによって進歩が生まれるとき、それによって必ずなにかしらマイナスの要素が生じてしまいます。プラウトはこれらのマイナスの要素を取り除くことができて、初めて真の意味での「進歩」と考えます。サーカー師は、「本当の進歩とは相対性を超越した霊性の領域においてのみ可能である」と主張しています。これは相対的な物質の世界における進歩を否定しているのではありません。それにともなうマイナスの面を認識し、その弊害を最小限にとどめる努力が必要であるということです。科学技術やそれによる発展や開発を否定するものではありません。たとえば、新しい発明がされたとします。その場合、新技術の導入によってどのような副作用が起き得るかを十分検討すること。そして、そのマイナス面を抑制できる対抗技術の開発をしてから実用化する、といったことを制度化していけばよいのです。
経済における民主主義
プラウトでは、世界の資源は利潤追求のためだけに活用されるのではなく、人間の基本的な必要性に応じて活用されるべきだと主張します。力のある者が好きなだけ富を蓄積したりすることも、勤勉か否かに関わらず均等に富を分配することも支持しません。それよりも必要性に応じた合理的かつ民主的な分配をすることで、プラウトはすべての人々に物理的・知的・霊的に成長できる機会を創り出していきます。たとえば、現在多くの国で見られる従業員と取締役との給与や暮らし向きの大幅な格差などは、民主主義経済を説くプラウトは黙認しません。社会や経済の仕組みは、直接我々の暮らしや幸福につながっています。大半の人々が、働いたら働いた分だけ報われるやりがいのある仕事や暮らしを持てないのならば、本当に民主的な社会経済のしくみとは言えません。
多様性と普遍性
世界の様々な問題の解決を試みた多くの学説は、断片的であったがゆえに社会の根本的な構造を変えるまでには至りませんでした。しかしプラウトは政治・社会・経済・文化・歴史・人間の心理などを含む包括的な視野に立った普遍的な理論として、大きな効果をもたらすことが出来ます。普遍的な視野を持ち、地域毎に行動していくことで、人種や宗教、国籍や性別などによる差別や偏見を超えて、人類全体がひとつになり、そして生物や我々を取り巻く環境のすべてが、ひとつの惑星社会として暮らしていくことをプラウトでは目指しています。そして、プラウトは法的にも実効力のある世界政府の必要性を説いています。それは、人類にとって、重要な環境や人権を護るという視点からも必要になってきています。けっして個人や各地域の文化や伝統などを均一化するということではありません。宇宙の中の地球という単位で社会をとらえることは、互いの文化や伝統を知り合うことになり、よりお互いを尊重し、普遍的な視野を育てていくことにつながっていきます。そのためには、我々一人ひとりの意識変革が重要です。それと同時に、具体的なプラウト的社会を提示していくことも必要です。地理や文化の相違とか資源の有無などを考慮し、自給的な経済活動を行える単位を基盤にした社会づくりのしくみを、サーカー師はプラウトの中に組み込んでいます。このような実現が困難に見えることに対しても、サーカー師は、それに向かって歩みを進めることが大切であり、普遍的な真の社会を創るための努力が不可欠であると提唱するのです。